本紙3面で連載中の小説、恩田陸著、丹地陽子画「スキマワラシ」。いよいよクライマックスに差し掛かろうとしている◆「いつも楽しみに読んでいる」というお声をいただいたり、「スキマワラシとはどういう意味なのか」とご質問を頂くなど、比較的高く関心を集め、好評の連載。お読みでない方のためにこれまでのあらすじを紹介すると、ごく簡単にいえば、建築デザイナーだった両親を幼い頃にトンネル内の事故で亡くした兄弟が大人になり、古物商という仕事を通じて、両親の過去を探る手掛かりを見つけ出していく―という展開。弟は、「自分達は、本当は3人きょうだいだったのではないか」という疑問を抱えている◆弟には不思議な力があり、自分達にかかわりのある品物に触れるとその秘める物語が視覚的に見える。特に、昔はあるホテルに使われていて、今はバラバラになり全国の建築物に使用されているタイルが、兄弟と何か強い関わりを持つらしい。誰もいないはずの建築現場に出没する麦わら帽子の女の子という都市伝説的なモチーフも登場し、時に上質のホラーめいた展開で読者の心臓を高鳴らせてくれる◆キーワードは「郷愁」だろうか。失ってしまった家族をもう一度見つけるための心の旅。小さな驚きと発見、緊張と緩和を繰り返しながら、いよいよ隠されていた物語の核心が間近に迫っている。ラストまで1カ月余り、じっくり文章を味わいつつ、著者ならではの、物語の持つスケール感を楽しんでみてほしい◆もう一つ、この小説で注目しているのが挿し絵。丹地陽子さんの絵は、シンプルな線で小説の世界観を十二分に表現している。単行本になるともうお目にかかれない多くの絵を、今のうちにじっくり味わっておきたい。(里)


