「猫八」とは江戸時代の物乞いのことで、門の前に立ってネコやイヌなど動物の鳴きまねをし、銭をもらう人を指すと、広辞苑にある。こう書かれるとあまり胸を張れるような仕事をしていた人に思えないが、いまではものまね芸の一つとして確立。自身の技術を高め、極めることで立派な伝統を持つ職業になるのだと感じる。
そんな猫八を将来襲名するのが、先日日高町中央公民館で開かれた文化講演会の講師の江戸家小猫さん。講演では曽祖父に当たる初代猫八さんの波乱万丈の人生も紹介していた。元は片岡市之助と名乗る歌舞伎役者だったが、当時のおしろいは鉛が含まれており、鉛毒にやられて半身不随に。山にこもって炭焼き職人になり、そこで聞いた動物の鳴き声をまねるようになった。指笛を使ったウグイスの鳴き声を得意とし、富岡八幡宮であめを売りながら披露。いまでいうスカウトマンに発掘され、寄席に出演するようになったという。
そんな苦労人の初代猫八さんのあと、弟子が2代目となり、小猫さんの祖父が3代目。父が4代目で、小猫さんがそのあとを襲名することになるが、小猫さん自身も相当な苦労人。ネフローゼ症候群という難病で12年間苦しみながらも、いまではものまね芸で舞台に立てるように。驚いたことに、ものまね芸は先代から教えてもらえるものではなく、自分自身が動物園などに通って特徴を勉強して習得。伝統のお家芸ではあるが、一人前になるまでにはたゆまぬ努力が必要。その精神力や持久力は初代猫八さん譲りだろうか。何事もあきらめてしまえば、その時点で可能性はゼロ。努力し続けることの大切さをあらためて感じる。(吉)


