テニスの全米オープン女子シングルスで大坂なおみ選手が、日本人として初優勝を飾った。表彰式の様子をテレビで見ていると、客席から大ブーイング。決勝で戦ったアメリカ選手のセリーナ・ウィリアムズ選手の勝利を期待していた観客からの不満の声だった。
大坂選手にとっては完全アウェイの不利な戦い。多くの観客がウィリアムズの出産後初の全米制覇を願っていた中、そのプレッシャーはいかほどだったか。普通なら体が硬くなり、思うようなプレーができなくなるほどの緊張と孤独感に襲われると思うが、終わってみれば6―2、6―4のストレートで圧勝。テクニックやパワーはもちろん、強靭なメンタルに感心させられる。それに対してウィリアムズ選手はラケットを投げたり、審判への暴言でポイントやゲームを落としたりするなど、荒れた行動が目立った。勝利への執念から来る行動と言えばそうなるのかもしれないが、冷静だった大坂選手とは対照的だった。
そして大坂選手のブーイングに対する言葉がまた印象的。サンバイザーを目深にかぶり、耐えるような表情で涙を流しながらも「みんな彼女(ウィリアムズ)を応援していたのを知っている。こんな終わり方ですいません。ただ試合を見てくれてありがとう」。本来なら憧れの選手に勝って大喜びのコメントになるはずだが、相手選手と観客を気遣うやさしさと謙虚さ。日本人の持つ礼儀正しさ、よい意味での忍耐力の強さを世界にアピールしてくれた。
そんな彼女が使ったラケットは国内で市販されているもの。「弘法筆を選ばす」と言ったところか。20歳の若者からも学ぶことは多い。 (吉)


