認知症になっても安心して暮らせるまちづくり条例(仮称)の制定を目指している御坊市は9日、市役所で職員研修会を開き、認知症の当事者で一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ代表の藤田和子さん(鳥取県)が「認知症になっても自分らしく暮らしていくために」で体験談を披露した。

市介護福祉課の谷口泰之係長と対談する形で日常の生活や認知症と診断されたときの心境などを語った。

藤田さんは11年前にアルツハイマー病と診断され、以来鳥取県で若年性認知症問題に取り組む会「クローバー」を立ち上げ、執筆や全国での講演活動を続けて誰もが生きやすい社会づくりに努めている。

藤田さんは、「地域が変わらないと住みやすくならない。私が住んでいる地域は個人的には暮らしやすいと感じているが、多くの認知症の人はまだまだそこまで感じていない」と認知症への理解はまだ道半ばだと強調。認知症と診断されたときの心境については、「友達との約束の時間を忘れたり、朝食べたものを思い出せないなど前兆があり、なんでだろうという不安があったので原因が分かってすっきりした」と述べた。「認知症になると何もできないと思われていた時代で、何もプラスの情報がなかった。これからどうすればいいか誰も教えてくれなかった」とサポートの必要性を訴え、御坊市も作成に携わり昨年度に発行された「認知症本人ガイド」の有用性をアピール。「認知症と診断されても、悲しみを無理やり抑え込んで元気そうにしようとしなくていい。悲しみを語り合えばいいと思う。認知症になって新しい生活をスタートさせればいい」と前向きに話し、「暮らしやすいまちになるようこれからも活動を発信していきたい」と締めくくった。

写真=体験談などを披露する藤田さん㊨