生き物は時間が経過すると老いていく。そして最後には死を迎える。もちろん人間も例外ではない。古代から、権力者らが若さを保ち続けようと不老不死の薬を探し求めたが、いまだに何百年も生き続けている人は存在しない。死なないということは人類の永遠のテーマ。「そんなことは不可能」と多くの人が思っているだろうが、若返りを繰り返すことができるスーパー生物も存在するそうだ。直径1㌢程度の傘を持つベニクラゲがそれだ。

 先日、白浜町にベニクラゲを研究する再生生物体験研究所が開所した。所長は研究の第一人者でもある元京都大学フィールド科学教育研究センター准教授の久保田信さん。ベニクラゲは体が傷つけられたり環境の悪い状態に放置されたりすると成長段階である「ポリプ」と呼ばれる状態に若返ることができ、再びポリプから成熟したベニクラゲが生まれるという。話を聞くだけでは分かりづらいが、簡単に言うとニワトリが卵に戻り、再び卵からニワトリに成長するような現象らしい。

 ちょっと想像し難い世界だが、仮に人間が若返ることができるのなら死に対する恐怖から解き放たれる。時間もたっぷりとあるのだから、やりたいことがすべて成し遂げられるかもしれない。人が若返るのだから超高齢社会も克服される。半面、「人が増えすぎたらどうなるのだろうか」と余計な心配までしてしまう。まさに夢の世界だ。

 松本零士の名作アニメ「銀河鉄道999」では主人公の鉄郎が機械の身体で永遠の命を手に入れようとした。しかしベニクラゲから作った薬を飲めば、何度でも赤ん坊に戻れるという未来がもしかしたら待っているかもしれない。できることなら筆者が生きているうちに実現してもらいたいが…。(雄)