2018年度第1回市民教養講座が30日に開講。「シミケン」の愛称で親しまれた元アナウンサーの清水健さんが講師を務め、「大切な人の『想い』とともに~112日間のママ~」をテーマに語った。結婚生活わずか1年9カ月だった妻の奈緒さんとの日々を映像で紹介、涙ぐむ観客の姿も。「マイク1本握らせてもらえればどこへでも行って、ありのままの思いを話したい。大変な思いをしながら頑張っている人達に『一人じゃない』と伝えたい」の言葉に拍手が送られた。

 冒頭で奥幹夫教育長が開講のあいさつに立ち、「市民教養講座はことしで40年」と長年の利用に感謝した。続いて清水さんが登場。舞台には演壇など何も置かず、マイク1本を手に観客に語りかけるように講演を始めた。

 清水さんは日本テレビのアナウンサーとして長年勤め、スタイリストだった奈緒さんと結婚。妊娠がわかり、健診で乳がんが発見された。どの医師を訪ねても「今回の妊娠は諦めては」と言われたが、2人で話し合って「3人で生きる」道を選択。手術で腫瘍を除去して出産、抗がん剤治療をすることになった。無事に元気な男の子が生まれ、幸せな日々を過ごしたが、やがて転移が見つかり、3カ月の長男を残して帰らぬ人となった。講演では「今でも、なぜ横にいてくれないんだろうと思います。転移がわかった時、ぼくは大声で泣きました。でも、奈緒は涙を見せなかった。ずっと笑顔でいてくれました」とかみしめるように語り、「思いは見ることも触ることもできません。でも、感じること、広げていくことができます」と力強く訴えた。マイクを通さず、肉声で叫ぶように「大切な人を亡くした方、今現在、病と戦っている方、ご家族を介護している方、皆さんは決して一人じゃありません。ぼくも、ありのままの今の自分を見ていただきたいという思いで全国でお話していますが、皆さんの温かさに力を頂いています。この御坊で頂いた力を、また次へと広げていきます」とメッセージを送った。

 現在、3歳半になった息子について「朝の6時半からベランダにプールを出して、思いきり遊びます。遊び始めるとエンドレスです。幼稚園へ行くのを嫌がるので毎朝通園バスまで抱えていっていたのが、やっと自分で歩いていけるようになり、沿道のお母さんたちから拍手してもらった」と、困らせられながらも「めちゃめちゃかわいい」と話し、笑いを誘う場面もあった。

写真=息子との日常を話す清水さん