県はこのほど、道成寺にまつわる「安珍・清姫物語」の日本遺産登録を目指し、物語から見る熊野古道を描いたストーリー「今も息づく『語り』~安珍と清姫がたどった道~」を文化庁に申請した。日高川町が中心となって製作を進めてきたストーリー。2018年度分には全国から76件の応募があり、登録は例年同様十数件から二十件程度。発表は5月ごろとなっている。
 日本遺産は地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するもの。2015年度から始まり、県内では和歌山市、海南市の「絶景の宝庫 和歌の浦」、湯浅町の「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」、新宮市、那智勝浦町、太地町、串本町の「鯨とともに生きる」が認定。全国で54件あり、2020年までに100件程度の認定を目指している。
 「今も息づく『語り』~安珍と清姫がたどった道~」は、最初に日高川流域で全国に先駆けて熊野の神が勧請された同時期に「安珍清姫物語」が生まれたことを説明。2人が出会った田辺市真砂の滝尻王子跡から始まり、清姫が悔しさで枝をねじ曲げたとされる田辺市の「捻木の杉」、清姫が袖をすったと言われるみなべ町の「袖摺岩」など、熊野古道には安珍を思う清姫の気持ちに触れながら歩くことができるもう一つの道があると紹介。物語は熊野詣と相まって全国に広がり、多くの古典芸能に影響を与えたことや、ゆかりのある場所は名所となりいまも大切に語り継がれていることなども記した。
 登録に向けては以前から町がストーリー作りに取り組んできており、昨年11月に同町で開かれた県政報告会では仁坂吉伸知事も登録に協力することを約束。ストーリーは日高川町のほか御坊市、田辺市、印南町、みなべ町と複数の自治体にまたがるため、県が申請者となって提出した。県内では広川町も「『百世の安堵』~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~」で申請している。
 日本遺産には初年度の15年度は83件の応募があり18件を、16年度は67件中19件、17年度は79件中17件を登録。18年度も例年同様の件数が選ばれるとみられている。