御坊市薗の天性寺で15日、「紀州ゆかりの会津藩士 山川浩展」と題した講演と朗読劇が披露され、約150年前に御坊の小松原村(当時)を舞台に実際にあった、傷ついた会津の落ち武者と御坊の旅館の女将らの心温まる実話に、集まった120人が感動した。
 幕末の会津藩士、山川浩が鳥羽伏見の戦いで敗走中、小松原村(当時)の旅館「中屋」で手厚い看護を受けたことがきっかけで、山川と同旅館経営の中野家の交流があり、明治時代に大きな話題となっていた。山川が中野家に贈った会津塗の椀や古文書などがことしになって中野家から見つかったことから、今回の講演会を御坊商工会議所が企画した。
 中野家を代表して、山川と交流していた中野吉右衛門のひ孫にあたる中野健さん(63)=横浜市在住=が「先祖と山川浩の歴史を探る」と題し講演。山川が加太から由良、御坊へと落ち延びたことや、中屋の女将おこうが当時、「厳重に戸締まりして落ち武者を中に入れないように」とのお達しが出ていたにもかかわらず、惨状を見かねて招き入れ、熱病を患っていた山川らを手厚く看護したことなどを説明した。
 「日高の住民は、苦難の中でも崇高な道徳を守る会津藩士に深い感動と畏敬の念を持ったのではないか。会津藩士は、気さくで献身的に尽くしてくれた日高の人々に大変な恩義を感じていただろう」と持論を展開。所蔵の史料一式を御坊中吉旅館(中屋から改名)の子孫一同で会津若松市に寄贈する予定で、「戊辰150周年の記念すべき年に紀州日高と会津の友好親善の架け橋になることを期待しています」と願いを込めた。
 中野家子孫の中野洋さんのあいさつや、由良町語り部クラブ会長の大野治さん、市文化財保護審議会委員の小出潔さんらも会津藩士について講話した。
 第2部では、御坊市文化財保護審議会委員の大谷春雄さん脚本の朗読劇も披露された。山川ら会津藩士が旅館中屋で看護を受けた際、琵琶の演奏に感動したことや、御坊を出発して江戸にたどり着いた際、紀州藩邸の前でひざまずいて感謝した場面を再現。二胡奏者の木塲孝志さん(大阪)の生演奏の中、海南市の劇団KCM東道さんと正木吉紀さんが臨場感あふれる朗読と舞いを披露し、観衆を魅了した。
 御坊市の多田幸子さん(76)は、「先人の素晴らしい善行は、同じ御坊の住民として誇りに思いました」と話していた。