自宅で使っていたパソコンが壊れてしまった。本欄のような原稿は深夜などに家で書くことも多いのだが、代わってノートにペンで文章を下書きしようとしても、困ったことにさっぱりできない◆学生の頃は色やデザインなど厳選した気に入りのノートをいつも手元に置き、気に入りのペンで好き勝手なことを書いていた。頭の中で考える言葉をほぼ同時進行で紙の上に、印字するような勢いで書き付けていったものだった◆それが今は、キーボードを叩きながら同時進行で文を考えることに頭が慣れきってしまったためか、手書きと同時にものを考えることができない。ノートの白いページを眺めても頭の中は同様に真っ白で、働きを停止したままだ。記憶力も著しく低下しており、頭を鍛えるためにも手書きの習慣を復活させなければと焦りを感じてしまった◆手書きが脳にもたらす好影響について調べてみた。あるサイトによると①理解が深まる②脳の機能をうまく使える③心身のリラックス④書いた内容を長期記憶に定着しやすい⑤自身の文字のオリジナリティを楽しめる⑥気持ちが整理できる⑦集中して取り組める―の7点が挙げられるという。④の長期記憶への定着は、「確かにそれはあるかもしれない」と納得させられる思いだった。同じ文章も、キーボードだと手書きよりも遥かに早く書けて疲れないが、その内容を長く覚えていられるかというとかなり疑わしい。指先だけでなく腕から動かして書いていくと、時間がかかる分、内容を心の奥深くへ直接刻み込めるような気がする◆元々とんでもない悪筆が、パソコンばかり使ううちにますますひどくなった。この機会に心を入れ替え、手と頭を鍛えた方がいいかもしれない。     (里)