昭和19年7月、米軍はサイパン島を占領し、日本の絶対国防圏に穴をあけた。大型爆撃機B29が無給油で日本を往復できるようになり、11月からは中国大陸にかわってマリアナ諸島が出撃拠点となり、都市部への空襲が激化した。
 この時点で日本の敗戦は決定的だったが、大本営は一億玉砕、本土決戦を主張して譲らない。爆弾をばらまくだけで戦闘能力のないB29は、護衛機をつけて日本の上空に侵入しても迎撃にあい、墜落することも少なくなかった。
 米軍は地上からの高射砲が届かず、零戦よりも高く飛ぶしかないが、1万㍍もの上空を飛行すれば燃料の消費が激しく、航続距離が短くなるうえ、爆撃の精度が著しく落ちる。そこで狙いをつけたのが、サイパン、テニアンよりさらに日本に近い、小笠原諸島の硫黄島だった。
 日本軍以上の犠牲を払って硫黄島を手に入れると、米軍は都市の住宅密集地帯を無差別に焼き尽くし、軍人ではない何十万人もの無辜の市民の命を奪った。日本人にとって、B29は悪魔のような戦争の象徴であり、それがトラウマとなっていまなお、夏の夜を彩る花火にさえ、空襲の恐怖がよみがえる人もいる。
 核の世の中となったいま、核ミサイルで米国に脅しをかける北朝鮮に、米国はさして新しくもない戦略爆撃機B1を差し向けた。核兵器は搭載していないが、空中発射巡航ミサイルやGPS精密誘導弾を撃ち込めるこの「死の白鳥」に、将軍様が震え上がっているという。
 72年前の日本を見よ。B29の大編隊に一晩で10万人以上が殺害され、完全な死に体に2発も原爆を落とされた。戦後、日本人を裁いた平和や人道に対する罪などくそくらえ。米国ほど無慈悲で恐ろしい国はない。謝るならいまのうちだ。  (静)