平成28年度第6回市民教養講座は28日に御坊市民文化会館大ホールで開講。今回が最終回で、雅楽師の東儀秀樹さんが「雅楽の秘められた力と可能性」をテーマに語った。笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)の音色を聴かせる場面もあり、観客は目を輝かせて聞き入っていた。
東儀さんは「雅楽は1400年前に大陸から渡ってきて、以来ずっと変わらずに今まで続いている。そんなに昔のことというのは、学者が発掘し、多分こうであっただろうと推測されるのが普通だが、雅楽だけは『こうなんです』と自信を持って示すことができる」と、古代からそのままの形で伝えられてきた雅楽の価値を説明。天から降り注ぐ光を表現しており「天」を象徴する笙、人がうたう時の声を表現し「地」を象徴する篳篥、天と地を自由に行き交う龍を表し「空間」を象徴する龍笛と基本の楽器3種を紹介し、「合奏は天・地・空を合わせる、つまり宇宙を創ること。それぞれ西洋楽器のルーツでもあり、雅楽を守っていくことは地球上の音楽文化のルーツを守ることでもある。そんなとても重要なことを日本人はやっている」と話した。
「東京五輪へ向けて英語教育が奨励されているが、外国人が日本人に求めているのは語学力ではなく、真の日本文化について教わること。知っていれば胸を張って『日本にはこういうものがある』と紹介できる。小学生から英語を勉強するような時間があるなら、お茶をたてたり、花を生けたりした方がよほど有意義」と訴えた。「タイの山奥で大きな象と出くわしたことがありました。笙を吹いて聴かせると象はのそのそとやってきて鼻で笙をなでるようにしながら聴いていて、吹き終えると『もっと』と催促するように鼻で笙を下から持ち上げてきた。不思議に怖さはまったく感じず、自然と一体になる音を実現できたようでとてもうれしかった」というエピソードも紹介。世界の楽曲を雅楽楽器で奏でたCDを出していることに触れ、「音楽は人種も国籍も超えて分かち合うことができるもの」と訴えた。
講演中にホルストの「ジュピター」、日本歌曲「浜辺の歌」、オペラ「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」の3曲を演奏。歴史ある楽器の大きな広がりと深みを感じさせる音色に、観客はうっとりと聞き入っていた。

