朝夕が寒くなり、早くも毛布を出した。こんな時は鍋を囲んで一杯やるのが格別。ちなみに自宅で水炊きをした場合は、普通にポン酢で食べるが、実は翌朝に残った鍋をポン酢など使わずにそのまま食べるのもお気に入り。具材はがすがすになっているが、その透明なスープは野菜の甘みや肉の旨みがじっくりと溶け出し、口の中で何とも言えないハーモニーを奏でてくれる。
 一応、筆者もそんな繊細な舌を持っているような素振りをしながら本題に入ると、先日、由良町水産加工研究協議会が行った魚の酒かす漬け試食会を取材。町内の旅館や料理店などがタイ、イサキ、サバにみそ、みりん、砂糖などの調味料を使って試作、改良した4種類の酒かす漬けが持ち寄られ、焼いた品をそれぞれ食べ比べた。筆者もご賞味に預かったところ、感想として「十分においしい」と思った。酒かすが多い一品は酒の風味が、ガツンと来る感じ。みそを混ぜて漬け込んだのはまろやかで、甘目に仕上げているのは、子ども向きでもある。それぞれに味わい深く、どれが一番おいしいかと言われると難しい。
 同協議会では、漬け込む期間を長くするなど、今後も改良を重ねていく予定だが、将来的に酒かす漬けを商品化する場合に、どんな味に統一していくのかも大きな課題となってくる。酒のアテに出すなら少々酒かすの風味が強い方がいいだろうし、朝ご飯のお供にするなら、みそやみりんでまろやかに仕上げた方が合いそう。つまり、一番いいのは複数の味で商品化することで、多様なニーズにも応えられる。まだ気が早いかもしれないが、一度、そういったコスト計算をしてもいいのではないだろうか。 (吉)