「山の日」の11日、JR天王寺駅から大和路快速へ乗車してすぐ、1人の外国人男性がスッと座席から立ち上がった。混み合う車内、2歳6カ月の娘を抱っこしているのを見て、席を譲ってくれたようだ。丁寧に頭を下げ、「サンキュー」とお礼を言って妻と娘がその席に座らせてもらった。
 60代くらいのこの外国人男性は、妻と2人連れ。チェコ共和国からやってきて日本に24日間滞在、各地を旅していた。北は北海道から始まり、関西では高野山などに行ってきた。この時点で一番気に入ったのは「奈良のお寺」。ライトアップされてムードがよかったと笑顔を見せていた。日本の印象については「日本人は親切で、まちがきれい。とてもいい」と大満足の様子。中央ヨーロッパに位置し、ドイツ、ポーランド、オーストリアなどに囲まれたチェコといえば涼しい、寒いというイメージがあったが、「夏は同じように蒸し暑いし、もっと(日本より)暑いと感じることもある」と説明。この夫婦にも娘と同じ年くらいの孫がおり、人見知りする娘に「シャイでかわいい」などと声もかけてくれた。
 外国人夫婦が電車を乗り間違えたため生まれた偶然の出会いで、自分たちの乗り継ぎまで十数分間のささやかな交流。訪日外国人旅行者が増える中、ニュースではトラブルなどもたくさん伝えられているが、日本のよさをいろいろと聞かせてもらったうえに外国人の気遣い、優しさにも触れることができ、楽しい時間を過ごせた。
 2020年東京五輪へ向け、まだまだ外国人旅行者は増えていくとみられる。そんな中、通訳を外大卒の妻任せというのは情けない話。日常会話程度は少しずつでもマスターしていかなければと思った出会いでもあった。(賀)