県は9日、平成33年4月の開学を目指している県立医科大薬学部の設置基本計画を発表した。薬学部は和歌山市内にある本年度で廃校となる伏虎中学校の跡地に新設。その跡地は市から無償貸し付けを受ける計画となっているが、市議会の中には反対意見もあり、8日には市が県に対して基本計画の公表延期を要望。県は「平成33年春に開学するにはいまがギリギリのタイミング」として公表、計画通り進めていく考えを強調した。
 薬学部(薬学科)は入学定員が医学部と同じ100人で、修業年限も医学部と同じ6年。医学部と連携したチーム医療に重点を置き、医療人としての総合的な知識、技能を備えた指導的役割を果たす薬剤師を養成する。薬剤師の地域偏在、高齢化が進むなか、その解消と地域包括ケアシステムの人材確保、中心市街地のにぎわい創出も期待される。
 基本計画によると、メーンとなる校舎は和歌山市役所の東側、本年度で廃校となる伏虎中学校の跡地に建設。今後、県は概算で約177億円を投じ、平成30年度までに基本設計と実施設計、文化財調査を行い、30年度から校舎建設工事をスタートさせ、33年4月の開学を目指す。
 これに対し、伏虎中跡地を無償貸与してくれるはずの市の議会内には計画を疑問視、反対する声があり、8日には市が県に対し、「議論が足りない」などとして基本計画の公表延期を要望。9日、記者会見で基本計画を発表した県の幸前裕之福祉保健部長は、「(和歌山市の中心市街地という)あれほどの一等地でもあり、(中学校の廃校から)間をあけずなるべく早くという考えから、33年4月に開学するにはいまがギリギリのタイミング」などと、この日の公表に踏み切った理由を説明し、今後も「市議会の議論が深まるよう、市とともに対応したい」と述べた。
 野尻孝子健康局長は開学により期待される卒業生の県内就職について、「現在は県内で年間平均約10人の薬剤師が増えているが、まだまだ足りていない。開学後は定員100人のうち20人程度が県内からの受験生になるとみられ、最低限、そのぐらいは県内で就職してほしい」との考えを示した。