都市機能の維持と優良農地の確保を目的として昨年8月、県が打ち出した都市外縁部や郊外の農地転用の運用厳格化について、仁坂吉伸知事は9日、これを撤回することを明らかにした。中心市街地の空洞化が進む和歌山市を例に、「優良農地の転用は原則として認めない」などとしていたが、県議会や首長の一部から疑問や反対の声が噴出。前日の議会一般質問では日高郡選出の坂本登議員(自民党)も厳しく批判、ダメを押す形となった。
 仁坂知事は昨年8月11日の定例記者会見で、和歌山市を例に市街地の拡大による中心市街地の空洞化、地価の下落などの現状を示し、無秩序な都市の拡大を防ぎ、コンパクトシティ化を進めるため、農業振興法に基づき、一部で県の同意が必要となる優良農地(農用地区域内農地)の転用基準などの運用を厳格化する一方、自治体の市街地再開発計画を支援する――という方針を発表。和歌山市だけでなく、県内全域を対象としていた。
 しかし、これに対して紀南地方市町村長との懇談会等で「津波対策の住宅の高台移転に支障をきたすのでは」などといった疑問の声が上がり、自民党を中心とする県議からも反対の意見が続出。8日の議会一般質問では坂本議員が「平野部が少なく、傾斜地の多い和歌山県にあって、農地の宅地転用を禁止することは、『人はこれ以上住まなくてもいい』といっているに等しい」などと厳しく批判し、農地を重要な資産とする農家の立場から、県外への人口流出、津波対策の高台移転の際の農地との競合などが懸念されると訴えた。
 こうした流れを受け、仁坂知事は9日の一般質問終了後、「県議会の議論を踏まえ、『優良農地の転用は原則として認めない』という表現を含め、昨年8月に発表した『守ります まちと優良農地』は撤回する」と表明。そのうえで、▽各地農業委員会、市町村当局はあらためて法の趣旨に照らし、その運用を行ってもらいたい▽とくに市街化調整区域内の農地転用については、法の趣旨に照らして細心の注意を持って行ってほしい――など4項目の希望を付け加えた。