平成24年9月、御坊市湯川町小松原、JR御坊駅前の旅館「コトブキ」を経営していた吉井幸子さん(当時71歳)が殺害され、現金が奪われた事件で、強盗殺人の罪で起訴されていた住居不定、無職井倉孝司被告(60)の裁判員裁判が、18日から和歌山地裁で行われる。住民を不安に陥れた事件発生から1年半、詳しい動機はまだ解明されておらず、公判で何を語るのか注目されている。
 起訴状などによると、井倉被告は吉井さんが経営する旅館に宿泊し、未払いだった4日分の宿泊代金約1万4000円の支払いを免れるとともに現金を奪おうと企て、9月25日午後2時すぎから3時10分ごろまでの間、旅館内でアジさき包丁や刺し身包丁で腹や胸を数回突き刺した上、浴衣の帯ひもで首を絞め、出血性ショックで殺害。さらに旅館内から現金約1万2000円を盗んだとされている。
 事件後、電車などを使って大阪や兵庫県に潜伏。1カ月後の10月24日、兵庫県明石市内にいることを突き止め、協力を依頼した兵庫県警の捜査員が書店にいるところを発見、逮捕した。逮捕当時の所持金は26円だった。事件前は三重県などで生活していたとされるが、なぜ御坊に来たのか、犯行に至った詳しい動機、犯行後の潜伏先などは逮捕後の調べでも明らかにされておらず、裁判での全容解明が期待されている。裁判は3日間予定されている。
 現場の周辺は小中学生の通学路で、近くには高校もあり、事件当時、教諭や関係者が通学を見守るなど警戒。一般住民が被害に遭う凶悪事件は、住民に大きな不安と衝撃を与えた。