先日、印南町の切目小学校で防災学習会があり、6年生が全校児童の住む家が津波浸水区域かどうか、近くの避難場所、逃げるのにかかる時間など1年間かけて勉強した成果を発表した。筆者は別の取材で聞けなかったが、参加した保護者の話では、誰がどこへ避難するべきか、非常に分かりやすかったという。JRの高架下は崩れる可能性があるので通らず、普段は通学路として認めていないJRの踏切を通って逃げることの必要性も強調した。地区ごとに分かれたワークショップでは、1年生も分かるように丁寧に指導した。児童たちが自ら津波避難マップを作製することにより、地域の実情が分かるのと同時に、下級生に受け継いでいく意識が高まる素晴らしい取り組みだ。形はさまざまだが、各学校では地震・津波対策に熱心に取り組んでいるといえるだろう。
 平成23年3月11日に東日本大震災が発生してちょうど3年になる。津波がまちをのみ込んでいく映像は忘れられず、思い出すたびに津波の恐ろしさを感じさせられる。とはいえ、この3年間で何かが大きく変わっただろうか。前述の通り、学校単位で子どもたちへの防災教育は着実に前進した。しかし、大人はどうか。地域の避難訓練の参加者が増えているとは言い難いところもあるだろう。
 この3年間で県内に津波警報が発令されたこともあるが、実際に避難した人はごくわずかだった。さまざまな訓練も訓練のための訓練になってはいないか。子どもたちが率先避難者となる取り組みは各地で進んでいるが、やはり大人が子どもたちの手本となるべきだろう。3・11の節目に、これまでの3年間を振り返り、何をすべきかを一人一人が考えよう。     (片)