平成10年に急増して以来、3万人を超え続けていた国内の年間自殺者がおととし、15年ぶりに2万人台に減少した。昨年も2万7195人で2年連続3万人を割り、4年連続の減少。例年、月別では企業が決算期を迎える3月に自殺者が増える傾向にあり、ことしも3月は自殺対策強化月間として、自治体などが啓発活動を展開している。
 自殺は過労や多重債務、介護疲れなどさまざまな要因が絡み合い、追い込まれた末の選択。多くはうつ病やアルコール依存など精神的な病気もあるといわれるが、周囲の人がその苦しみに気づき、病院や専門家につなぐことで防ぐことができる。
 日本人は誰でも、病気や経済的な理由で苦しむ人をみれば、「かわいそう」「助けてあげたい」と思う。それが友人、親類であればなおさら、自分の家族のような気持ちで救いの手をさしのべる。しかし、当事者の状態が上向くまでには時間がかかることも多く、支援する側がつい口にしがちな「頑張ろう」という励ましは逆に追い込んでしまうことにもなるため、支援する側の同情はやがて怒りに変わり始める。
 「なぜできないのか」「なぜ分かってくれないのか」。人を助けようと必死で伸ばす手を、相手はしっかりつかんで這い上がってきてくれない。依存症の場合は健全な判断力、自制心を失い、一般的な常識が通じないことに疲れがたまり、「もう勝手にしな」と冷たく突き放すような言葉も出てしまう。
 こんなにもやさしい日本人が、やさしさのために傷つき、疲れてしまっている。支援する側は気負わず、テキトーに抜きながらも、暗闇の中でさみしがっている人を決して見放さないで。回復が目に見えずとも、つながりを保つことが大きな救いとなっている。   (静)