収賄と横領、職権乱用の罪で起訴された中国重慶市の元トップ、薄煕来被告の裁判が話題。共産党内の権力闘争、「腐敗の一掃」を掲げる習近平主席による見せしめ的な要素も強いが、ネットで法廷のやりとりを公開するなど異例の展開も、全面対決姿勢の薄被告が理路整然と検察側の矛盾点を突くなど、党の思惑通りの効果は出ていないという。
 政治と司法が一体の人治国家にあって、今回の裁判について、公正な司法判断が下されるとみる人はどれほどいるのか。国外はもちろん、国内でも外国向けのポーズ、茶番劇とみている人民は少なくないだろう。毛沢東を崇拝する習近平の党が人民の反感を買い、薄被告を応援する大衆もまた毛沢東の肖像画を掲げているのもよく分からない。
 約10年前、中国と台湾を除く世界各国でベストセラーとなった『マオ 誰も知らなかった毛沢東』(ユン・チアン、ジョン・ハリディ著)によると、毛は公開処刑で軍と人民に恐怖を植え付け、そのうえの中国統一の野望はまさにファミコンで遊ぶ子どものよう。思想も国家観も戦術も何もない。ただひたすら己の快楽と権力、名誉のためだけに卑劣の限りを尽くし、その狂気さには吐き気をおぼえる。
 「彼が生涯で唯一、人のためにした善行、それは死んだこと」。元中国人の歴史家にそこまでいわせる毛沢東が築いた共産党、その独裁を維持するために天安門の学生を武力で弾圧した鄧小平、反日教育を推し進めた江沢民、胡錦濤、そして習近平。体制に反対、抵抗する者は徹底して排除するやり方は、今回の薄煕来裁判をみても変わっていない。
 自由と民主主義、法の下の平等が保障された日本。間違いなく世界一の平和・人権国家である。  (静)