ことしは日本におけるバレンタインデーの80周年だという。昭和7年にそんな西洋的な行事があったとは、と不思議に思い調べてみた◆そもそもローマ時代、兵士の結婚を禁じた皇帝に逆らい、秘密に兵士と恋人を結婚させていたバレンタイン司祭が2月14日に処刑されたのがこの日の起こり。世界中で「愛の日」として花や菓子を贈り合うが、女性が男性にチョコレートを贈るのは日本だけだ◆洋菓子店モロゾフが1931年(昭和6年)に神戸で創業。翌年2月にバレンタインチョコレートを発売したのが日本のバレンタインデーの始まりだそうだ。社名の元となったロシア人菓子職人モロゾフの名も、英語読みだとバレンタインだった。一般に広まったのは40年以上経った1970年代後半。菓子の中でチョコへの限定がこれほど定着したのは、他の菓子にない要素が日本人の琴線に触れたのだろうか◆昔からチョコは大好物。運転中の眠気覚ましにもガムや飴よりチョコレート菓子を用意する。チョコを使った菓子と他の甘い菓子とは、魅力において酒好きにとってのアルコール飲料とそうでない飲料くらいの違いがある。甘いだけでなくその底にある苦味が魅力の鍵とも思える◆カカオ豆は学名テオブロマ・カカオ。アステカ語で神の食べ物を意味する。大航海時代にスペインが古代メキシコのアステカを征服。アステカ人が「神の飲み物」として飲んでいたカカオ飲料にスペイン人が砂糖を入れたところ苦味と甘味が絶妙にマッチし、やがて世界に普及した◆「神の食べ物」の苦味と、欧州人が文明の味として加えた甘味の融合。人が人を恋う気持ちの甘美さとほろ苦さを、チョコの味は表現しているのかもしれないなどと思ってみる。
(里)

