結婚式、入学式など「式」と名の付く儀式には凛とした張り詰めた空気がある。ところが、成人式に限って言えば、その空気をあまり感じられない。筆者の担当する町の成人式でも、首長の式辞や来賓祝辞はそっちのけで隣と小声で会話したりする光景がみられたのも事実。全国的には壇上に上がって式典を妨害したり、酒を飲んで路上で騒いだりするトラブルも相次いだ▼張り詰めた雰囲気がないのは新成人だけでなく、熊本市の首長は壇上で人気アイドルグループ「AKB」の歌を振り付きで熱唱し、挙句の果てには出席した新成人とハイタッチ。その様子をネットで拝見したが、まるで緊張感が伝わってこない▼外見的には大人でも内面的には未成熟な人もいる。しかし社会が求めているのは内面的な部分の成熟で、自己の行動に責任を持たなければならないし、自立した考えも必要だ。筆者も人に言えるような人格者ではないが、せめて成人式のわずかな時間ぐらい胸を張って凛とした姿勢で出席してもらいたいと思う▼いまは平和な世の中だからこそ、テレビなどで報道されるような「荒れた成人式」が相次ぐのかもしれない。しかし、戦時中だと20歳にもなれば赤紙が届いた。若者たちは兵隊として駆り出され、祖国のためにと銃を手に戦った時代もあった。いまの若者と当時の若者を比較すると、同じ20歳でも精神面で大きな開きがあるように感じる。それは忍耐、我慢、思いやり、覚悟など日本人の美徳といわれる心を持ち合わせているかどうかの違いではなかろうか。いま、その美徳が欠如してきたといわれている。日本を守るために命を差し出した若者は、いまの新成人たちをどうみるのだろう。 (雄)