「えらい目に遭いましたが、依頼は絶対に断らないようにしています。町に遊びに来てくれた人たちに楽しい思い出を持ち帰ってもらいたいんですわ。田舎に関心を持ってほしいんです」。
 体験型観光のゆめ倶楽部21で竹細工、米作り(お米塾)のインストラクターを務める瀧川さん=坂野川=。体験場所となっている田んぼ全80㌃のうち半分が水没、自宅横の倉庫も流失した。特に倉庫は「家族の次に大切」という竹細工の工具をはじめ、芳澤あやめの木彫り人形など数々の作品や農機具を保管していただけに、「これまでの苦労も思い出もいっぺんに流され、放心状態でした」と振り返る。
 瀧川さん以外のインストラクターも自宅が浸水、田畑や施設などの体験場所も水没。体験型観光は水害発生から休止を余儀なくされたが、わずか38日後の10月12日には再開。関係者の努力と熱意で早期復旧にこぎつけた。
 床上70㌢の浸水被害を受けた自宅などの復旧作業に追われながらだったものの、「町のためにみんなで力を合わせて頑張っていきたい。やれることからやっていこう」と、再開第1弾となった岩出小の体験学習からインストラクターに復帰。友人から竹を譲り受けたり、勝手が違う仮の道具で対応し、貯金箱や来年の干支の辰の置物製作などを指導。お米塾も無事だった田んぼで何とか稲刈りや脱穀作業を行い、8家族すべての受講生に修了証書を授与できた。「ホンマにほっとしましたわ。塾生の皆さんは収穫はできへんと思ってただけに、大喜びしてくれましてん」と笑顔で話す。
 大阪市からIターン12年目に見舞われた災害。今後の対策として自宅と倉庫を1㍍ほど高い自宅裏への移動を検討している。「こんなことこれからも起こるんやろか。家の近くは堤防がおまへんねん」と不安は消えないが、「この時期でもウグイスの声で目覚めるんですわ。こんなにいいところは他にはないんです」と町を愛してやまない。
 「活動を通して次代を担う子どもたちに田舎に目を向けてもらい、都会の人らに移住してほしいんです。耕作放棄地対策、地域振興、限界集落の解消につなげていければ」。田舎暮らしのよさを都会の人たちに伝える体験型観光。あらためてやりがいを感じ、災害にも負けることなく町PRへ貢献を誓っている。