多くの人が思っているだろうが、ことしを振り返ると、これほど災害の恐ろしさを感じさせられた年はない、ということに尽きる。東日本大震災で東北地方を襲った津波の映像は、一生頭から消えないだろう。街になだれ込んだ波は、乗用車がまるで発泡スチロールでできているかのように押し流していた。筆者にとっては阪神大震災以来の衝撃だった。災害はこれだけにとどまらず、紀伊半島豪雨では地元の日高川町が甚大な被害を受けた。自然は人の生活に大きな恩恵を与えているが、ひとたび牙をむけば大きな脅威となる。近い将来南海地震に直面するであろう和歌山県人にとって、どのようにして自分の命を守るのか、考えることが一つの使命であろう。
 そんな中、県教委が県内の公立小中学校教員向けに「津波防災教育指導の手引き」を作成した。登下校中などに巨大地震が起こったら、どのような行動を取らなければならないのか、子ども自ら判断、行動できるようにするため、教員がどのように指導すべきかを示している。小学生の子を持つ親の一人として、ぜひとも真剣に、熱意をもって取り組んでもらいたい。手引きの冒頭に西下博通教育長が「すべての先生方が手引きを活用し、熱意を持って防災教育に取り組まれることを願います」と記しているように、教員の皆さんには絶大な指導力を発揮してもらえるよう切に願う。
 昭和21年12月21日に昭和南海地震が発生してから、間もなく65年となる。いつ起こってもおかしくない状況で、防災教育は待ったなしだ。子を持つすべての親は、学校に任せっ放しにせず、家庭でも教育しなければならない。それは大災害を経験した日本人としての教訓である。 (片)