台風12号の豪雨による日高川の氾濫は日高川町の基幹産業である農業に大きな打撃を与え、 農家が悲鳴を上げている。 中でも川辺地区ではハウスなど施設がつぶされる被害が目立っており、 「まだ借金が残っているのに、 また一からのスタートとなると二重ローンに...」 と経済的負担がのしかかる生産者も多く、 「国は補助金など支援対策を考えて欲しい」 と訴えは切実だ。
堤防を越えた水は多くの田畑をのみ込み、美山や中津地区では水田や千両、川辺地区は特産のデコポンやポンカンなど柑橘類とミニトマトなどのハウス施設が甚大な被害を受けた。県の第1報によると、被害額は農作物と施設合わせて約2億2000万円とされている。
川辺地区の中でもとくに被害が大きいのは、専業農家の多い松瀬地区。日高川左岸沿いにあり、日高川漁協も壊滅的な被害を受けた地域だ。同地で唯一、バラを栽培している上野吉生さん(61)は、4棟続きの鉄骨ハウスが完全に水没し、施設内に土砂が入り込んで、22㌃で栽培していたバラが全滅した。バラは植えなおせば数カ月で育つが、施設はそうはいかない。ベンチのような台の上で育てる特殊な栽培方法を実践しており、肥料や水やりはすべてオートメーション化、夏場の暑さ対策にエアコンを設置するなど最新機器を導入しており、栽培を始めて13年間で設備に7000万円を投資した自慢のハウスだった。しかも、7月中旬には400万円を借金して特殊なビニールの屋根を張り替えたばかりだったが、今回の水害で流木などが突き刺さった。流入した土砂がまだ乾いていないため、施設内にもろくに入れないという上野さんは「365日バラを収穫していましたが、いまはやることがなくて。仕事があるときは忙しくて大変だと思っていましたが、家にいると気が滅入ってきます。それでも起こったことをどうこういっても仕方ない。妻と2人、1年がかりでやり直そうと励ましあっています」と前向き。ただ、「まだ見積もりを出していないが、元通りにするには最低でも2000万円はかかると思う。まだ借金が残っているので、また借りるといわゆる『二重ローン』ですよ。それでもやらなければ生活ができない。松瀬では鉄骨ハウスやパイプハウスが全壊した人がたくさんいるので、少しでも国が援助してくれれば助かる。これはわたしだけでなく、被害にあった農家みんな同じ思いです」と支援策に期待をかけている。
ことし1月、家業を継ぐために脱サラして帰郷した同地の蔵光俊輔さん(32)も、30㌃のカーネーション施設のうち10㌃が全滅した。「帰って来てさあこれからというときにこのありさま。補助も必要ですが、畑の場所を動かすことはできないので、元に戻してもまた同じような水害が起これば意味がない。再発防止をお願いしたい」。ポンカン畑に土砂が入り、木が横倒しになった同地の男性は「木を起こして新しい土を入れています。いまは木に影響がないように見えますが、場所によっては土砂がたまり、木が枯れてくる可能性もある。ミカンは新しい苗木を植えると、出荷まで最低5年はかかる。そうなればその間は無収入。被害額が示せない被害が現場にはあるんです。松瀬だけでなく入野や和佐など川辺地区はミカンが盛んなので、これから影響が出なければいいのですが」と不安な表情を浮かべていた。

