台風12号による水害発生の6日後、仕事のあと日高川筋をさかのぼっていった。取材担当ではなく現地に赴く機会がなかったが、自分の目で状況を見たいと思った◆路面に泥水がべったりと色を残し、家具等を外に出している家々の様子が次々に目に入る。フェンス類などが無残にひしゃげ、泥まみれの草が巻きついている。大量の水が一挙に動く時の力の凄まじさを表しているようだ。こんな所まで水があふれて来たのかと、信じられない思いに言葉も出ない◆以前、ダムに関する投稿があり、それをきっかけにダムの種類等に興味を持ち調べてみた。その時、治水目的に特化したいわゆる「穴あきダム」のことを知った。洪水調節専用で、下部に水を常時流下させる穴があいており、普段は貯水しない。大量の水が流入した時のみ貯水され、水流を調節する仕組みだ。「もしも」など夢想しても仕方のないことだが、今回の水害でそれを思い出し、もしも椿山ダムが治水ダムだったらと思わずにいられなかった◆現実には、椿山ダムは治水(洪水調節)・利水(上水道への利用)・発電と3種類の用途を持つ多目的ダムである。利水・発電のため常に一定以上の貯水量が定められており、洪水時は「これ以上貯水池にためてはいけない最高水位」が決まっている。その条件下で、短時間にあまりにも大量の雨が降り注いだ場合の対応を的確に考えるのは難しいかもしれない。だが今後、大雨のたびに感じる恐怖を緩和できるよう、検証は最適の管理方法を求めて慎重に、真摯になされなければならない◆現在のつらい体験は、後世への有効な指針となり得る。捉え方次第で、大きな傷は後の人々のためにより大きく生かすことができる。   (里)