みなべ町の清川区長会長で自主防災会副会長も務める龍神睦男さん(56)が、同地区が台風12号の影響で孤立した当時の様子について本紙に語った。電話もつながらない状況の中、地元消防団員らが崩土で埋まった男性の救出作業、区民の安否確認と奔走した。龍神さんは「通信手段がなかったことが活動の大きな支障となった。地域の拠点となる公民館などの施設には、防災無線の設置が必要だと強く感じた」と、体験から得た教訓を話した。
4日午前2時ごろ、清川と高城地区の境界、法手見トンネル付近で崩土が発生。約30分後に現場近くに住む消防団員が龍神さん宅を訪れ、土砂崩れを知らせた。すぐに近くに住む消防団員ら5、6人が現場付近に集まったが、外部につながる道路のすべてが寸断され、清川が孤立状態となっていることに気づいたという。崩土現場では男性1人が土砂に埋まっている状態だったが、前日の午後11時ごろから一帯は停電。電話も不通で消防に通報できず、外部との通信は消防車に設置している防災無線のみ。龍神さんは「防災無線で役場総務課と連絡をとったが、いちいち無線のある場所と往復しなければならない状態だった」と振り返った。
電話が不通となったことで区民との連絡がとれず、安否確認も不可能に。復旧するまでの間、区役員、消防団員、町職員が手分けして毎日欠かさず全240世帯を訪ねて回った。各地で土砂崩れが発生、車が通れる範囲は限られ、片道2㌔を歩いて訪ねなければならないところもあったという。
住民らも土砂の除去などに取り組み、女性は木の川会館で炊き出しを行って消防団員らにおにぎりを提供。御坊方面への道路が通れるようになり孤立が解消されてからも、交通手段のないお年寄りを近所の人が買い物に連れて行くなど、区民総ぐるみで助け合いながら対応した。
龍神さんは「清川は自主防災会でモデル地区となっており、以前から防災計画の策定に取りかかっていた。8月31日に開かれたワークショップでも、4日に予定していた避難訓練の進め方について話し合い、孤立状態の対応についても協議していた。まさかこの日が本番になるとは思わなかったが、事前に対応を検討していたことで住民間の意思疎通ができた」と話し、「避難先となる公民館などには、停電でも使える防災無線が必要。将来発生するといわれている南海地震では今回と同じことが起こるだろうし、ライフラインの復旧まで長引く可能性もある。非常食など防災グッズの備えは必ず役立つ」と教訓を話した。

