新年を寿ぐ色は赤である。伊勢エビ、タイ、千両に南天。初日の出、ご来光の色でもある。松と千両を玄関に生けると、緑に映える赤い実が美しい◆印南の特産でもある千両は、豪勢な名前がいい。南天は「ナンテン」の音から「難を転じる」とされ、縁起がいい。そればかりでなく、花の少ない冬の時期に鮮やかな赤い色で風景に彩りを添えてくれるところが昔から珍重されてきたのだろう◆赤という色名は「明るい」を語源とするそうだ。生命力を象徴する色でもある。日本の子どもたちは太陽を赤く描く。海外では普通黄色に描かれ、実際の太陽を考えると当然なのだが、日本では黄色い太陽よりも「真っ赤な太陽」の方が自然である。日の丸が赤いからという説もあるが、子どものころに日の丸をまず見て「太陽は赤い」と認識したということはあまりないように思う。「日出づる国」の日本では昼間の太陽より朝日の方が重要であり、朝日の赤い色が日本人にとっての太陽の色だったのだろうか。そしてまた、太陽の持つ生命感と熱という性質を直感的にとらえ、それを赤い色でストレートに表現しているのかもしれないとも思える◆筆者の一番好きな色は青で、赤が好きだった時期はあまりなかった。それがこのごろになって、生き生きと生命感を表す赤い色に惹かれるようになってきた。千両の明るい赤、南天の深みあるつややかな赤が本当に美しい色だと思える。年をとると赤が好きになるとの俗説を思い出すと心穏やかでないが、ここは、今まで自分になかった部分を補う心の動きと思いたい◆新しい年の始まり、今まで敬遠してきた色を好きになったように、今まで遠かったものにどんどん関心を向けて心の財産を増やしていきたいものである。      (里)