細菌やウイルスを含む食べ物を食べたりすると起こる食中毒。一般的には6~8月の夏場に多く発生するイメージですが、いまの時期も油断は禁物。夏場のサルモネラ菌、O157などにかわって、秋から冬にかけてはノロウイルス食中毒など感染性胃腸炎が流行する季節なのです。今季もすでに岩出市や湯浅町、由良町の保育園などで集団感染が報告されています。今回は寒い冬場、貝類の生食などで感染するケースが多いノロウイルスについて、御坊保健所で話を聞きました。(図は日本食品衛生協会の冊子から)
 ■10月ごろから増え、年末にピーク 感染性胃腸炎は、細菌、またはウイルスによる感染症で、発熱、おう吐、下痢などが主な症状。冬場に流行するのはウイルスによるものが大半を占め、和歌山県では過去5年間の平均値をみると、10月ごろから徐々に増え始め、年末ごろにピークを迎えます。秋から冬にかけての原因病原体はノロウイルスが多いといわれ、感染力が強く、患者の吐しゃ物、便から排出され、手指を介して感染することも多く、処理・清掃の際には十分な注意が必要です。
 ■発症までの潜伏期間は1~2日 ノロウイルスの感染から発症までの潜伏期間はおおむね24時間から48時間。吐き気、おう吐、下痢、腹痛、発熱など風邪に似た症状がみられ、通常はこうした症状が1~2日続いたあとによくなり、後遺症もありません。また、感染しても発症しないことや、軽い風邪程度のような症状の場合もありますが、お年寄りや乳幼児は症状が重くなるケースがあります。脱水に対する手当てを忘れないよう注意してください。
 ■カキなど二枚貝の生食は危険 感染経路は、ウイルスを蓄積したカキなどの二枚貝を生で食べて感染することが最も多いといわれています。これはウイルスを含んだ糞便が下水処理場で処理しきれないまま、川から海、カキの養殖場へと流れ出た場合、カキがウイルスを蓄積するためで、カキなどの二枚貝はできるだけ生では食べないようにしましょう。次に多いのは、食事を作る調理従事者から感染した食品を食べた場合。また、患者の吐しゃ物や便を処理する際にウイルスが手につき、それが口から体内に入って感染する「人から人へ」のケースもよくあります。
 ■吐しゃ物の処理は早く適切に 吐しゃ物や糞便からの感染は、老人介護施設や幼稚園・保育園などが多く、小学校や中学校、もちろん、一般の家庭も例外ではありません。吐しゃ物を処理するときはビニール手袋にマスクをつけ、窓を開けて換気しながら、吐しゃ物が乾く前にペーパータオルで拭き取り、ビニール袋に入れましょう。吐しゃ物が乾燥するとウイルスが空気中に飛散し、飛沫感染が広がる可能性があります。吐しゃ物のついていた場所は塩素系漂白剤を200倍程度に薄めてよく拭き、その周囲にウイルスが飛び散っている可能性があるので、汚れていなくても周囲を拭き取るようにしてください。使ったペーパータオル、ビニール手袋、マスクなどはビニール袋に一緒に入れて捨てましょう。
 ■予防の基本は過熱調理 ウイルスは十分に加熱すれば死にます。予防は、二枚貝を生で食べないようにし、手洗いや調理器具の洗浄は日ごろから気をつけるのが基本。食品を加熱するときは中心まで火が通るように、85度以上で1分以上加熱を。感染の原因となる食べ物は生のカキが目立っていますが、 カキ以外にも野菜サラダ、 ケーキ、サンドイッチ、あえものなど、加熱が不十分だった食品からの感染も多く報告されています。