今から100年余り前の大正8年(1918年)、雑誌「新潮」で「美術の秋」という言葉が掲げられた。それが、「芸術の秋」との言葉が使われ出した始まりだという◆青く澄んだ空が高く、木々の葉が美しく色づき始める季節。各地で美術展等が開かれる季節だ。今年で第72回を数える御坊市美術展覧会も、入賞作品が決まった。132人から152点が出品され、うち学生は26人。洋画と書部門での出品である◆子どもの頃、「お絵かき」は好きだったが上手ではなかった。小学校低学年時の図工の授業で、校内にあった給食センターを見学して描いたことがあった。床が青緑色だったので、まずそれを塗った。バランス感覚があまりなく、一面の青緑色の中に白衣のおばさん達がポツンポツンと配されたシュールな絵が出来上がった。「悪い例」として掲げられた◆高学年の図工の授業では、学校の裏の花壇に咲いていたきれいなアヤメ、ではなくその下に生い茂っていたドクダミの花を描いた。花の一つ一つを竹ペンで縁取りして丁寧に描くと、ほめてもらって校内の階段の踊り場の壁に張り出された。オリジナリティという言葉はまだ知らなかったが、自分だけのやり方にこそ価値があるのだなと分かった気がした。それも良し悪しで、「悪い例」になることもあるが◆第72回市展の審査結果を取材。最優秀賞に当たる知事賞受賞作品を、写真データで拝見した。洋画、日本画、書、写真の4部門、それぞれの作品にそれぞれの「美」がみなぎっている。市展は今月29日から11月1日までが第1期、11月5日から8日までが第2期。作品は、作者以外の人の目に触れてこそ存在価値を発揮する。ぜひご来場いただきたい。(里)