残暑が続く中、川の中では秋の気配が漂い始めた。水温が少しずつ冷たくなり、「清流の女王」と呼ばれるアユにも変化が見られる。夏の間、縄張りを持ち、盛んに石のコケを食(は)み、縄張り意識を持ったアユが他のアユを追い払っていたが、次第にその攻撃的な習性が弱まり始める時期でもある。体には卵を持ち始め、今後は群れをなして下流へと下る落ちアユの季節へと移る。

 アユ釣りを愛する太公望にとっては、この時期になると少しだけ切ない気持ちになる。筆者もその一人だ。初夏、若アユが元気に泳ぎ始める頃から、暇さえあれば川へと出向き、アユとのやり取りを楽しんできた。のんびりと竿を出している中にも、釣り糸の張り加減やポイント選びなどに集中し、少しでも釣果を伸ばそうと夢中になる。そのアユとの真剣勝負の駆け引きが魅力で、気づけば日が暮れるまで釣りを続けたこともしばしばあった。

 しかし、落ちアユになると、もうそのアユとの勝負は終わりの合図。今シーズンは今月中旬までは竿を出そうと思っているが、釣り人によっては、そろそろ納竿を考える時期だ。「年魚」とも呼ばれるアユは初冬の便りが聞こえ始める頃に産卵し、一生を終える。その姿には、はかなささえ感じる。

 四季がはっきりとしている日本。自然の営みは過去から止まることなく繰り返されてきた。季節は常に移り変わり、確実に次のステージへと向かう。それは、自分自身が持っている時間の経過でもある。当たり前のことだが、時間は逆戻りしない。「小さなひとときを大切にしながら、今を精一杯に丁寧に生きよう」。人生の半分以上が過ぎ、季節の変わり目に、そんなことをふと思う。(雄)