1926年(大正15)12月、大正天皇の崩御により践祚され、即位された昭和天皇。この漫画は戦史研究家、故半藤一利氏の「昭和史」を原作とし、若き青年君主の激動の生涯を描いた人間ドラマです。

 天皇は19歳から20歳にかけての21年3月から半年間、英国、フランスなど欧州5カ国を歴訪され、英国ではジョージ国王と同じ馬車でパレードし、フランスでは一般の人に紛れて地下鉄に乗車。降りた駅では切符を持ったまま改札を出てしまうハプニングもありましたが、この欧州歴訪は天皇の人生に大きな影響を与え、のちに自身が「籠の鳥のような生活から自由を経験し、それがいまも役立っている」と語られた異国の日々が生き生きとよみがえります。(第4集)

 天皇に即位後、国内だけでなく世界的な恐慌が続くなか、満州事変、五・一五事件、国連脱退、二・二六事件などを経て、大日本帝国は米国との戦争に突入。結果、完膚なきまで叩きのめされ、ポツダム宣言を受諾して戦争が終結します。

 約1カ月半後、天皇は連合国軍最高司令官のマッカーサーを訪問します。会見が終わり、通訳をつけて2人だけで行われた会談で、昭和天皇は自らの命と皇室財産を引き換えに、国民の衣食住の保証を願い出ました。第1集の冒頭ではこの様子が描かれ、マッカーサーが天皇の勇気に満ちた言動に感動し、「私はこの国王がどのような運命をたどってきたのか知りたいと思った」という言葉から物語が始まります。

 来年は昭和の始まりからちょうど100年。いま、すべての日本人に読んでほしい物語です。          (静)