もう夏休みということで、今回は本のひだかやメンバーが「この夏、学生のみなさんに読んでほしい本」をチョイスして紹介します。読書感想文の本選びの参考にしてみてください。
私が選んだのは、今年の小学生高学年向けの課題図書になっている「ぼくはうそをついた」。この本は戦争を身近に想像でき、今を生きる自分たちは未来の平和のために何ができるのかを考えさせられる物語です。
物語 広島に住む小学5年生のリョウタは、一緒に暮らす祖父のシゲルじいちゃんから戦争で亡くなった大おじのミノル(シゲルの兄)の話を聞く。
ミノルは1945年8月6日、広島に落とされた原爆により13歳で命を奪われてしまった。残された父(リョウタのひいおじいさん)は亡くなるまで、ミノルの遺骨がないことをずっと気にしていたのだ。
リョウタは、年老いたおばあさんと出会う。おばあさんは男の子を見つけては「ヘロゥ」と近寄って顔をのぞき込んだりするので、男の子たちから陰で「ヘロゥばあ」と呼ばれていた。ヘロゥばあに話しかけられたリョウタは「やめてください」とつかまれた腕をつい振り払ってしまう。すると、「おばあちゃん、帰ろう」とヘロゥばあに近づく女の子がいた。その女の子はリョウタが密かに憧れている一つ上のレイだった。
リョウタは、広島原爆資料館やミノルが被爆した場所を訪ねるなど、戦争について調べる。そんな中、リョウタとレイは話すようになり、身内に原爆の被爆者がいることをお互いに語り合う。
ある日、レイからひいおばあちゃんのタヅが行方不明になったと聞き、リョウタはそこで、ヘロゥばあはレイのひいおばあちゃんだったことを知る。戦争で亡くなった当時小学生の息子を探して、今も男の子たちに声をかけているのだ。
リョウタは偶然、タヅを見つけ、「ショウタか」と声をかけられる。ショウタはタヅが戦争で亡くした小学生の息子。リョウタは思わず「はい、ショウタです」とうそをつき、タヅの息子のふりをしてしまう。
…うそをつくのは良くないことですが、時には許されるうそもあります。ショウタはタヅのことを思ってうそをつきました。そうすることで、息子を亡くし、行き場のなかったタヅの心を救おうとしました。
来年で終戦80年。当時を知る人は少なくなっています。被災者の思いをリアルに感じ、共感すること。そのことの大切さを教えてくれる優しい作品だと感じました。(鞘)