最後の夏合宿に臨んだ森澤さん

 半世紀近い伝統を持ち、強豪として知られた南部高校少林寺拳法部(現在は同好会)は、今年度末で部員がいなくなり、廃部となる。この3年間、唯一の部員兼主将として活動し、先日、最後の夏合宿を終えた森澤結芽(ゆめ)さん(17)は、部がなくなることへの寂しさをにじませながらも、お世話になった人たちへの感謝の気持ちを胸に、将来の新たな夢に向かう。

 南高少林寺拳法部は1975年、同好会としてスタートし、翌76年に部に昇格。部員は多い時で50人を超え、南部スポーツ少年団など小中学生で少林寺拳法を習った子どもたちの受け皿となり、強豪チームとして全国舞台でも活躍した。

 近年は教員の指導者を確保するのが難しくなり、部員の数が減少。部員5人以上などの規定を満たせず同好会に格下げとなり、さらに部員ゼロが3年間続いたことで廃部予定だったが、20年春に森澤さんが入部したことでとりあえず3年間存続。しかしこの間、新たな入部はなく、来年度以降も入部の予定がないため、廃部が決まった。

 森澤さんは小学校1年から少林寺拳法を始め、中学時代はソフトボールを経験。南高ではコロナ禍で大会の中止もあったが、2年生の冬の近畿大会では単独演武の部で見事優勝。最後の公式戦となった先月下旬のインターハイでは6位に入る健闘をみせた。

 3年間の練習は、田辺市の神島高校の少林寺拳法部で行ってきた。授業が終わって電車と自転車で神島高に向かう日々。「団体や組演武に出場できないのは残念でしたが、部活を通じて集中力や忍耐力、コミュニケーション能力が身につきました。仲間や親、先生らが支えてくれたおかげでここまでくることができました」と感謝。廃部には「自分がいた部がなくなるのは寂しく、何とか部員を増やそうとしましたができませんでした」と悔しい気持ちも明かす。今後については「少林寺拳法を続けるつもりはありません。将来の夢があります。まずは東京で就職してお金や経験を積みたいです」と目を輝かせ、就職活動に励む。

 顧問の和泉友紀さん(36)は「神島での練習に毎日参加して3年間を過ごしてきたのは、相当な覚悟がないとできなかったはず」と森澤さんの頑張りをたたえ、三十数年前に監督を務め、現在も少林寺拳法南部高校支部長代務として部に関わる三前雅信さん(76)は、「伝統の灯が消えるのは非常に残念で仕方ないが、やむを得ない。復活は難しいだろう」と話している。