展示会へ向けて準備を進める岩永さん

 美浜町三尾のカナダミュージアムで9月7日から、三尾にゆかりがある日系カナダ人、村尾敏夫さん(1920~2020)にスポットを当てた展示会「日本とカナダで生き抜いた100年~村尾敏夫展~」が開かれる。村尾さんは日系カナダ人コミュニティーの交流促進へ熱心に活動した中心人物。戦中の強制収容、戦後の混乱など苦難を経験しながら明るく生きた笑顔の人生がパネルでよみがえる。

 企画したのは、東京大学大学院農学生命科学研究科農業資材経済学専攻修士1年で、三尾でカナダ移民について調査している岩永淳志さん(23)。2年前、三尾とカナダでたくましく生きた中津フデさんにスポットを当てた展示会を開いており、今回が第2弾。

 村尾さんは1920年、カナダ・スティーブストンに、三尾出身でカナダに移民した父母の間に生まれた。小中学校は三尾で過ごし、卒業と同時にカナダに戻って父と一緒にサケやニシンの漁師に従事。太平洋戦争中は日系カナダ人の強制収容を経験し、戦後は三尾に渡り、漁師や大阪の進駐軍のトラック運転手など、混乱と苦しい生活の中も必死で生き抜き、喜美代さんと結婚。長女が誕生したあと1952年に再びカナダへ。スティーブストンで漁師として家族を支え、90年に現役を引退。大好きだったゲートボールや剣道、詩吟などを通じて現地の日系カナダ人の交流へ熱心に活動。地域のために献身的に行動した人物として現地でも知られている。

 パネル展では、6人の子ども、大勢の孫に囲まれて豊かな余生を送る姿や、パーティー好きで多くの人を集めて茶がゆ、雑煮、サバのなれ寿司など日本食を振る舞う様子など、苦難の経験を感じさせない笑顔あふれる写真を展示。三尾でフィールドワークを行っている京都外国語大学の学生とコラボした、カナダの風景などをバーチャルに体感できるスクリーンも登場する。

 岩永さんは「毎週火曜に孫たちを学校に迎えに行って自宅で日本料理を振る舞う『サカナチューズデー』を開いていたりと、家族団らんや友人との写真がたくさん並びます。大変な苦難の歴史があったはずですが、写真はどれも笑顔なのがすごく印象的。村尾さんの人生からカナダと三尾の歴史に触れてもらいたい」とPRしている。