未来投資事業で道が整備され新しい住宅が続々(印南地区)

 印南町では今年に入り、住民基本台帳に基づく人口が8000人を割った。県が発表した推計人口では、昨年1年間の自然動態で93人減、社会動態で27人減、合わせて120人の減少。人口減少対策が喫緊の課題となる中、町では若者定住促進施策に力を入れ、人口減少に少しでも歯止めをかけようと取り組みが広がっている。

 同町の人口は2005年に住民基本台帳で1万人を割り、以降減少。今年1月末では8005人、2月末で7990人となった。2018年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来人口の推計では、今後年間約120人ずつ減少するとされており、2040年で5329人、60年には3530人になると推測されている。この現状に町では人口の減少幅を食い止めるため、若者定住促進条例に基づき、さまざまな施策を展開している。

 19年度からスタートした未来投資事業では、高台の宅地造成を進め、道幅の拡張や上水道を整備することで民間の不動産業者が土地を販売しやすいよう参入を促す。印南地区では30件の宅地化を完了させ、12件の若い世帯の入居が決まった。今年も新たに20件の宅地化に着手する予定で、このほか新築住宅取得や賃貸住宅家賃の助成事業も行っている。

 15年の国勢調査では、印南地区で25~44歳の転入者が136人増えたことで、その子ども世代の0~14歳が53人増加したことが分かっており、若い世代の転入で人口減少のスピードに一定の歯止めがかかる兆しが見えつつあるという。

 同地区に妻と子どもと暮らす佐々木麦さん(37)は5年前、沖縄から移住した。空き家改修費用補助金の制度があったことや、町職員が親身に物件探しを手伝ってくれたことが移住の決め手となり、「子どもを育てる環境としても、とても気に入っています」と話す。

 今月3日放送のNHK「クローズアップ現代」では、ここ5年、20代後半から30代までの世代が過疎地域に移住する傾向があると特集され、若い世代の移住が増えている市町村上位500が紹介された。印南町は276位で、増加率は8・6%。日高地方では日高町(68位)に次いで2番目の順位だった。町企画産業課は「戦略的な住宅施策を行ったことがこの結果につながっているのでは」と分析し、今後も移住施策を積極的に進めていきたいとしている。