みなべ町沖に浮かぶ鹿島。言い伝えによると、江戸時代、1707年(宝永4年)と1854年(安政元年)の地震で大津波が打ち寄せてきた際に怪火が現れて津波を東西に分け、沿岸地域の被害を最小限に食い止めたそうで、毎年8月1日に感謝の気持ちを込めた奉納花火祭が開催されており、今年もコロナで花火は中止したが、厳かに神事が執り行われた。地震の際、怪火が現れたかどうかは分からないが、県の津波シミュレーションの動画などを見ても、確かに鹿島に津波がぶつかることで威力が変化しているように見え、現実的に鹿島があることで被害が減少するように感じる。


 そんな無人島には鹿島神社の本殿や漁船を見守る船魂神、平安時代の武将平敦盛の塚などがある。県の「わかやま歴史物語100」の一つのストーリーにも選ばれており、ホームページによると、鹿島の2つの山のちょうど中間にある谷間は荒々しい岩肌で、龍が牙をむいたように見えることから「竜の口」と呼ばれる。付近の海底には「龍珠」のような丸の岩もあり、運がよければ海上からも見ることができるという。また、地元の渡船業者に頼めば鹿島まで埴田漁港から約10分で渡してくれるそうで、プライベート感味わえるビーチで年中を通して水泳や釣りも楽しめる。


 古来神域として守られ、防災のシンボルともなっている鹿島は、観光という大きな可能性も秘めており、コロナ禍の中、感染リスクが低い屋外スポットとしても注目される。ある地元出身者によると、天空の城ラピュタの世界観で人気の友ケ島にも負けない魅力があるという鹿島。いまこそ一層発信していくチャンスかもしれない。(吉)