2年半ぶりに観客数制限なしで迎えた大相撲名古屋場所。コロナの急拡大により後半は休場力士が続出し、幕内の取組が不戦勝だらけの日もあったが、力士は千秋楽までガチンコ勝負でファンを楽しませてくれた。

 振り返ってみると、残念だったのはやはり休場力士の多さ。幕内は元大関の高安が初日から全休、前頭筆頭隆の勝と大関御嶽海が7日目から、売り出し中の一山本、琴ノ若、人気者の遠藤、翔猿も途中からコロナのため休場した。

 さらに残念だったのは、若元春が初めて横綱に挑んだ8日目結びの照ノ富士戦。2分を超える大熱戦は若元春が左四つから前へ出ようとした瞬間、立行司の式守伊之助が中途半端な「まわし待った」をかけた。

 勝負に出て動いた若元春は当然ながらそれに気づかず、行事が見えていた照ノ富士は力を抜いて土俵を割った。まわしを直して元の体勢から再開したが、水を差された若元春は下手投げで敗れ、じつに後味の悪い一番となった。

 若元春は6勝9敗と負け越したものの、勝ち越しに等しい活躍ぶりだった。とくに14日目の霧馬山戦は土俵際の投げの打ち合いに物言いがつき、もう一丁もさらに際どい勝負となり、軍配は霧馬山に上がった。今場所の幕内の全取組の中で、このけんか四つの両者の一番が最高の相撲だった。

 今場所は休場が多かった半面、物言いも異常に多かった。それだけ熱戦が増えているということか。また、不祥事で1年間の出場停止となった元大関朝乃山が三段目で復帰し、全勝優勝を決めたのもうれしいニュースで、再び三役に駆け上がって優勝争いを演じてもらいたい。

 郷土力士は三段目千代雷山、序二段栃乃島の2人が勝ち越し。関取誕生はいつか。(静)