ただ今熱戦が繰り広げられている世界陸上オレゴン大会。サニブラウン・ハキーム選手が100㍍で日本勢初の決勝進出を果たし、ウクライナ勢が戦禍の中、走り高跳びでメダルを2個獲得するなど、明るいニュースもあり、全力で戦う選手の姿には勇気づけられる。

 私は、世界陸上といえば、キャスターを務める俳優の織田裕二さんと織田さんが歌うテーマソングを真っ先に思い浮かべる。2007年の大阪大会からテーマソングに起用された「All my treasures」は中継ファンにとって、もはや国歌のようなもの。その織田さんが今大会をもってキャスターを引退すると発表した。1997年のギリシャ・アテネ大会から13大会連続、25年間務めたキャスター姿を見られるのも最後。私は俳優である織田さんの情熱あふれる伝え方、そして何よりアスリートに敬意を払う姿勢が好きで、競技をより一層楽しませて頂いたと思っている。

 一つのことに対し、その知識を深め、取り組み続けることはできたとしても、それで周りから絶大な信頼を得ることは容易いことではない。本当にその物事が好きでいられるかだったり、その人が持つ能力や性格に合っているかだと思う。織田さんは情熱的でかつ物事への謙虚な向き合い方が世界陸上の空気にぴったりだったからこそ、視聴者が知らず知らずのうちに魅了され、支持を得たのだろう。

 今週末に大会は終わってしまう。そして楽しみは最後にもう一つ、織田さんのテーマソングをバックに大会のダイジェストが流れるエンディングが待っている。今年はどんなエンディングで視聴者を感動させてくれるのだろうか、大会最終日まで、熱い戦いから目が離せない。(鞘)