鉄道マニアに船舶マニア、路線バスマニアなど、交通網に関するマニアは各種いらっしゃいます。この類のマニアというとなぜかポジティブ変換されないケースがほとんどですが、マニアといって侮るなかれ、彼らの探究心・パワーは計り知れず、かなりの経済効果をもたらし、今や一大カルチャーとして君臨しています。私もそのカルチャーに魅了されている一人なわけで、日本中を網羅する国道にも興味が湧いた時期があったのです。

 この本は国道マニア歴17年、47都道府県津々浦々32万㌔を走破したという筆者による、まさに国道エンタテイメントな一冊。国道マニアなら誰もが知る名所や、国道の歴史・雑学、青い逆三角形に道路番号が書かれた国道の標識、いわゆる「おにぎり」についてなど、あらゆる角度から国道を紹介。教養書としても大変読み応えがあります。

 数ある国道のなかでも、険しい山道を縫って縫って縫いまくる「酷道」は国道マニアのなかでも最大勢力を誇るそう。わが和歌山県も酷道のメッカとして各メディアで紹介されることが多く、「死にGO」の語呂合わせでおなじみの425号線ももちろん本書の中に登場していますが、それをも凌駕する本当に酷い酷道がいくつも登場。例えば、岐阜県を通る418号線は危険なため長らく通行止めになっているのになぜか国道指定を外されていないという猛者。巨大な落石が道をふさいでいる場所もあり、道とは言えないレベルに荒れ果てている様子が写真付きで紹介されているほか、「危険!落ちたら死ぬ!」と大書きされた看板が現れる岐阜~福井県境の国道157号線など、各地にはエクストリーム国道がいくつも鳴りを潜めています。この夏、納涼がてらに酷道めぐりなんていいかもしれません(笑)。

 普段何気なく走っている国道ですが、その世界は大変奥深いものでした。(鞘)