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アドルフに告ぐ 全4巻 手塚治虫著

手塚治虫(てづか・おさむ) 1928年豊中市生まれ。漫画家、アニメ監督、医師。代表作は「鉄腕アトム」「ブラックジャック」など多数。89年、60歳で他界。

 それはそのまま人類の歴史ともいわれるほど、人間は有史以来、絶えず戦争を繰り返しています。原因はさまざま挙げられますが、一つにはやはり異なる民族同士の文化、宗教の対立が大きいのではないかと思われます。本作は手塚治虫が1983年1月から85年5月まで約2年半にわたり、漫画雑誌とは違う媒体として初めて、月刊文藝春秋で連載した歴史漫画です。

 物語 第2次大戦前後の時代、ナチスの支配下のドイツと戦前の日本を舞台に、「アドルフ」というファーストネームを持つ3人の男たち(アドルフ・ヒトラー、アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミル)を軸に、「ヒトラーがユダヤ人の血を引く」というドイツ国家の重要機密文書を巡って、巨大な歴史の流れに翻弄される幼なじみだった2人のアドルフ少年の友情、彼らを取り巻くさまざまな人たちの数奇な人生をダイナミックに描く。

 ナチスの親衛隊が血眼になってその行方を追うのがヒトラーの出生の秘密が記された文書。この文書をめぐって物語は二転三転、神戸で育ったドイツ人外交官と日本人妻のハーフのアドルフ・カウフマンと、その親友でドイツから亡命してきて人気のパン屋を営むユダヤ人夫婦の息子アドルフ・カミルの人生が凄まじい。

 「ヒトラーはユダヤ系」という話はつい最近も、ロシアのラブロフ外相がマスコミの取材の中で同じ発言をしてイスラエルの反発を招き、プーチン大統領が謝罪しました。そのニュースを聞いて思い出し、本棚から引っ張り出して十数年ぶりに読み返しましたが、いろんな説がある機密情報の真偽はともかく、やはり戦争とは民族の対立なのだと、現実の世界をみながら痛感。ロシアとウクライナに限らず、ドイツとソ連、日本と中国、アメリカと中東など、どの戦争、どの民族の争いにもあてはまるストーリーではないでしょうか。(静)

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