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みなべのふるさと道場に最終の涅槃像

涅槃像に手を合わせる赤松さん

 みなべ町清川の本誓寺「ふるさと道場」に安置されている地蔵や仏像はいずれも同寺前住職で道場主の赤松宗典さん(73)と交流がある、秋田市の中川信行さん(79)が35年間かけ、一体ずつ魂を込めて制作、奉納されてきた。その数なんと陶器製の地蔵1000体、木彫りの仏像33体の合わせて1033体。1033体目となる涅槃(ねはん)像は、大病と高齢で制作活動が難しくなった中川さん渾身(こんしん)の最終作として、今月12日に奉納された。

 中川さんは高校教師時代に趣味で茶碗や壺の焼き物を制作。仲間との展覧会に陶器の地蔵を出展したのをきっかけに、地蔵を作り始めた。1986年9月、秋田県内のデパートでの薬師梅試食販売の会場で、通路の長椅子で座禅を組んでいる赤松さんを見つけ、「この和尚こそ、私の地蔵を引き受けてくれる人」だと直感。その日のうちに赤松さんを自宅に招いて地蔵を見てもらい、赤松さんのふるさと道場建立の夢(2001年春完成)を聞いて意気投合した。年内に136体の地蔵を赤松さんに届け、さらに1000体まで贈ることを約束し、7年間で達成。地蔵は伝統的な形のものから、寝そべり地蔵、少年少女像、神父像など国籍、宗派を問わず多種多様だ。

 そんな折、赤松さんの一人娘の真理子さんが9歳で他界したという知らせを聞き、供養のために名前の響きが似ているマリア像を木彫りで制作、寄贈。これを機に木彫りの釈迦像や観音像なども制作し、ふるさと道場に奉納してきた。

 最終作の涅槃像は、体長2・2㍍、重さ300㌔。5年前から構想を練り、3年前にがんを患ってからは入退院を繰り返しながら制作を続けた。堅い桂の木を使った一木造りで、ノミを打つ作業はまるで格闘。大病を抱え、来月25日で傘寿(80歳)を迎える体には大変な作業だったが、「なんとか死ぬ前に完成を」と自身を奮い立たせた。涅槃像とは、釈迦が入滅する様子を表現した仏像で、最終作に自身の姿も重ねたという。

 現在、体調がよくなった中川さんは、「仏師というわけでもない私の作を受け入れていただいた赤松さんとの出会いは私の人生の宝。多くの人に私の地蔵や仏像を見て、やさしい平穏な気持ちになってもらえればうれしいです」。赤松さんは「感無量。中川先生の平和への祈りを後世に伝えていきたいと思います」と感激していた。

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