卓越した農業技術を着実に次世代に継承するため、昨年度から始まった県の事業「匠の技 伝道師」の認定で、今年度は日高地方から日高川町若野のミカン生産者圦本亨さん(78)の認定が決まった。

 「匠の技 伝道師」は、優れた栽培技術を持つ農業者を認定し、技術を受け継ぎたい人を募集、継承することで、農業従事者のスキルアップや生産性向上、収益増加など経営強化につなげることが目的。初年度は7人(日高地方は1人)を認定し、今年度は新たに圦本さんを含め3人の認定が決まった。

 ミカン農家で育った圦本さんは18歳から家の仕事を手伝い、甘くておいしいと評判のブランド温州「若野みかん」を生産。1995年に導入された「ゆら早生」を川辺地区でいち早く取り入れるなど、温州ミカンの栽培に取り組んできた。60年間で培われた匠の技は特に、ゆら早生の整枝・せん定と植物成長調整剤を活用するなど高い肥培管理技術力で、一般的には10㌃当たり2~3㌧の収量に対し、圦本さんは平均6㌧を収穫、高秀品率も実現している。

 圦本さんは「ミカン作りは葉が命。木が小さいうちから整枝し、幹に近い木の中心までしっかり日が当たるようにせん定すれば、葉が増え、収量も上がる。肥料も品種や樹勢に合わせた量を与えればいい」と話し、認定については「好きでやってきたことですが、経験を重ねてきたことが認められたかな」と笑顔を見せる。

 現在は若野の日高川沿いと川辺地内の山手など、約3㌶の園地で温州ミカンや不知火、ハッサクなども栽培しており、「シカなどの獣害被害が深刻。後継者不足のため、生産量が減ってきているのも地域農業の課題。産地活性のために、私の栽培法が役に立つならしっかり伝えていきたい」と話していた。

若野のミカン畑で圦本さん