コロナ禍で旅行先での過ごし方も変化し、人が行き交う観光地を巡るスタイルから、自分たちだけの空間でのんびりと時間を過ごす滞在型のスタイルが注目を集めている。日高地方でも例外ではなく、特に海の景色が美しい印南町の島田地区では新しく貸別荘がオープンするほか、購入の問い合わせが増加するなど、別荘の需要が高まっている。

 島田の国道沿いに先月27日オープンした「dogvilla Plumeria(ドッグヴィラプルメリア)」は、一棟貸しの別荘で、「愛犬と共に過ごせる犬同伴専用ヴィラ」がコンセプト。京阪神の富裕層をターゲットにしており、宿泊料は2人一組13万円から。部屋には犬と一緒にくつろげる特注ソファや最新家電、ジャグジーなどがあり、夕陽百選にも選ばれた海岸線を望む庭には犬専用のプールも完備。株式会社フジバヤシ(和泉市)を経営する愛犬家のオーナー藤林強さん(54)が景色に惚れこみ、愛犬とゆったり過ごせる空間を提供したいとオープンを決意した。また、料理は地元の飲食店に提供を依頼し、スタッフは地元の人を募集するなど、地元経済にも積極的に貢献していくという。

 同じく島田の別荘地「紀の郷」は問い合わせが急増している。町内で不動産業を営む上野文生さん(71)は、「今までになく物件の問い合わせがきている」と話す。特に多いのは京阪神に住む60代の富裕層からで、仕事や子育てが落ち着き、感染リスクのある都会で過ごすよりも、海の見えるところで余生を過ごしたいと永住用に購入するケースも多い。

 紀の郷は約50年前にオープン。1200区画の土地を有し、当時は国民的人気を誇った大相撲の横綱大鵬を広告塔に起用するなど大々的にPRされた。1980年代後半のバブル期には購入が急増。現在は物件が280件、うち208件が別荘、20件が住宅として入居している。

 バブル当時50~60代だった入居者も80~90代となり、高齢で訪れることができないため売却する人も増えており、入居者の世代交代も進んでいる。上野さんによると、売却された別荘を再度住みやすいよう改装をすれば、すぐに次の買い手が見つかり、早ければ問い合わせから1カ月足らずで成約する人もいる。紀の郷に限らず、海沿いの物件、海を眺められる物件はかなりの人気。物件は月に1件売れればいい方だが、先月は一気に3件も売れたという。

 印南は大阪から高速道路で約2時間、インターからのアクセスも良く、白浜へも約30分で行けるという立地の良さがある。国道や鉄道路線も海岸線を通り、眺めのいい景色が続くことも魅力のようだ。

先月27日にオープンした、海を眺めながら愛犬と過ごせる一棟貸し別荘「ドッグヴィラプルメリア」