椿山ダム近くのリフレッシュエリアみやまの里では、道路沿いの壁面にかれんなササユリの花が見ごろとなっている。

 ササユリは、野山に自生する薄いピンク色のユリで、茎や葉が笹に似ているのが名前の由来。日本特産で中部地方から西に広く分布しているものの、野生種は種から花を咲かせるまでに7年ほどかかり、繁殖力が弱く、群生しにくいなどの特徴がある。それでも各地で見られたが、近年は環境の変化や獣害、乱獲により全国的に激減している。

 希少となったササユリが咲く里山の風景を取り戻そうと日高川町では、ササユリ普及育成協議会やバイオセンター中津が球根の生産や植栽に取り組んでいる。バイオ中津では、植物バイオテクノロジーを利用して種子を培養し、小球根を生育させ、そのリン片の組織培養で球根を増殖。町内の農家に供給し、栽培農家は切り花として出荷しており、市場価値の高いササユリの特産品化に向けて取り組まれている。植栽活動の方は、以前はフジ棚ロードがある森林公園に球根を植えて栽培。ササユリの名所になりつつあったが、2018年の開花直前にほとんどの球根がイノシシの食害被害に合ってしまった。19年からは、獣害に合いにくい場所でと、道路沿いの階段状になったブロックの壁を花壇として活用。20年は球根の不作で植え付けができなかったが、21年の晩秋には1500個の球根を植え付けた。販売には向かない規格外や余剰分の球根が活用されているというが、反り返る花びらや薄紅色が上品でとても素敵に咲いている。自然のものを再現するむずかしさと苦難の連続を乗り越えた花は、今週末までが見ごろというので、未来の特産品を楽しんでほしい。(陽)