私がおすすめする本は『いとみち』。

 最初に読んだのは高校生の時でした。舞台は青森県。高校生の主人公、相馬いとと彼女を取り巻く環境で繰り広げられる日常を描いた物語です。内向的かつ訛りが同世代の人と比べて強いがゆえに、人との関係性構築にハンディキャップを負っていた彼女はアルバイトを始める事を決意。勤務先はなんと「メイドカフェ」。そこで出会う人々、学校生活での体験、いとがかつてたしなんでいた「津軽三味線」、異色の一言では語れない魅力があります。

 実在の地名や施設なども多いので雰囲気をイメージしやすく、日本文化に洋楽カルチャーなども混じりあうので異文化体験という意味でも非常に興味深いです。それほど難しい言葉がなく、若年層にもおすすめです。

 奇抜なカルチャーの側面もそうですが、様々な立場・境遇の人が登場します。漫画家志望者、シングルマザー、怪しい雰囲気を醸すおじさん等々。ひとたび読み始めればきっと誰かに感情移入してしまう事でしょう。多感な時期に初めて読んだので強く印象に残っていますが、大人になって読み返してもまた違った視点が見えてくる、シンプルかつ難解な作品です。