今月1日、私の敬愛していた元サッカー日本代表監督、イビツァ・オシムさんが80歳で他界されました。この作品と直接関係はありませんが、連載15年になる大好きなサッカー漫画の最新刊をご紹介します。

 物語 達海猛35歳、弱小プロサッカーチームETU(イーストトーキョーユナイテッド)監督。かつてはETUのスター選手で人気絶頂時に海外移籍、直後に大けがをして引退。10年間、ファンや関係者の前から行方をくらましていた。電撃的に姿を現し、古巣の監督に就いた当初は「裏切者」と非難する元ファンもいたが、飄々とした独自のスタイルで批判をかわしつつ、意表を突く作戦で着実に勝利を重ねる。紆余曲折を経てチームメンバーやファンの心をつかみ、以前は夢でしかなかったタイトルを狙える位置にまで到達している。一方、チームの若きホープ椿大介は日本代表のメンバーに呼ばれ、アジア杯で鮮烈な世界デビューを果たすが、準決勝でチームを敗退させるミスを犯し、帰国後はマスコミから戦犯扱い。世界を舞台に天国と地獄を経験したダメージからなかなか立ち直れない。だが、チームに戻って走り出してからは、世界で得た地力が遺憾なく発揮され始めて…。

 というのが前巻までのあらすじ。

 そして60巻。

 チームが、対戦相手が、ファンが、日本中のみんなが、ようやく椿を文句なしに認める巻です。

 かつての達海と同じ、7番を背負って戦うピュアな若きヒーロー。気の弱さが前面に出て「チキン野郎」と皆に(達海にも)揶揄されていた以前の姿は完全には払拭されていませんが、根っこの部分が間違いなくたくましくなったと、読む者に説得力を持って感じさせる描写が凄い。

 監督が主人公という珍しい漫画ですが、とにかく引き込まれます。名言の宝庫です。サッカーに詳しくない人にもぜひ読んでいただきたいです。(里)