日高熊野古道楽歩会や熊野古道紀伊路語り部の会、戦争体験の語り部、地元のゲートボール競技普及、東日本大震災被災地支援、子どもの健全育成など幅広く活動しておられた日高町在住の杉村邦雄さんが、先日他界された。享年84歳◆ゲート競技を通じて知り合った東北の人々から津波で「ゲートの道具も流されてしまった」と聞き、有志に呼びかけて道具や生活物資を送付。現地には柑橘類が少ないと聞いて当地の甘夏も送った。果実を手にした笑顔の写真と喜びの便りが届いた。杉村さんは実際に現地にも赴き、出会った人々の言葉、見聞したことを原稿用紙33枚分の手記にまとめて写真と共に本紙に寄稿。4回にわたって掲載させて頂いた。「大きな犠牲が警鐘を乱打している」との真情あふれる言葉は今も忘れない◆このほかにも水害等の被災地への支援を行い、第五福竜丸の悲劇を訴えた絵本「ばらの祈り」の存在を知った時には多くを購入。周囲の人に周知した。自然を愛し、クマノギクなど希少植物が開花するたび知らせてくれた。また、県内の知られざる偉人の顕彰にも情熱を注いでおられた。ご夫婦でいろんな所を旅され、その体験談を聞くのもとても楽しかった◆出会うすべての物事にみずみずしい好奇心を燃やしておられたからこその、実に幅広い活動。「知りたい」という自身の望みを満たすだけでなく、他の人のためにできることがあれば惜しみなく力を尽くすという信条が行動と直結しておられたように思う◆刻々と変わる現在の世界情勢についてなど、ご意見を拝聴したいことはまだまだたくさんあった。今はただ、伝えてくださった一つ一つを思い返し、忘れることのないようしっかり心に刻み直している。(里)