碑の前で手を合わせる参列者

 田辺市龍神村殿原区の「連合軍戦没アメリカ将士之碑」で5日、太平洋戦争末期に同地区に墜落した米軍爆撃機B29搭乗兵の慰霊祭が営まれた。

 B29は1945年5月5日、日本の戦闘機との空中戦で殿原地区の西ノ谷に墜落。搭乗兵11人のうち7人が死亡、生存した4人は捕虜となり、3人が処刑され、1人は不明とされている。殿原の住民は戦時中にもかかわらず米兵を埋葬して供養する卒塔婆と十字架を建て、終戦前の6月9日に慰霊祭を執り行った。その後、惣大明神横に慰霊碑を建立。毎年慰霊祭を続け、今年で78回目となる。

 今年は昨年に続いて新型コロナ感染予防のため区役員らのみ少人数で行った。大応寺の松本周和住職らの読経の中、焼香していった。アメリカ出身で奈良県吉野在住のジャーナリスト、デイビッド・カパララさん(33)も初めて参列。デイビッドさんが住む自宅から見える大峰山には、1945年6月1日、大阪空襲に向かう途中、B29が墜落。11人のうち7人が死亡、4人が連行された。デイビッドさんは10年前にALTで来日、3年前から吉野に住み、B29墜落のことを知ってから調査している。吉野では慰霊祭は行われていないが、アメリカに住む11人の遺族らと連絡を取り合っており、将来的には交流会を開きたいといい、「龍神で慰霊祭が78年も続いているのは素晴らしい」と話した。

 子どもの頃に墜落を目撃し、調査や語り部を続けている古久保健さん(84)はロシアによるウクライナ侵攻を憂い、「残念でならないが、諦めずに平和への努力を続けたい」と決意を新たにした。