20日午後の県議会臨時会で否決された県の統合型リゾート(IR)区域整備計画は今月28日までの国への申請が間に合わず、白紙に戻った。投票による採決では賛成18人、反対22人というわずか4票差での決着となり、議員や県民からは「残念」「仕切り直しを」「うれしい」など、さまざまな声。県勢浮揚の起爆剤にしようと誘致に力を注いだ仁坂吉伸知事は悔しさをにじませた。

 本会議では、総務委員会の新島雄委員長と経済警察委員会の井出益弘委員長が、いずれも委員会として計画案を「妥当」と判断したことを報告。一方、藤山将材IR対策特別委員会委員長は「参画企業の公表、資金調達の裏付け、大阪のIRとの競合などを調査し、賛成少数で否決した」とした。反対討論では共産党県議団を代表して高田由一議員が、「指摘してきた課題が何ら解決されておらず、県民合意もない」と述べた。採決は無記名投票で行われた。

 自民党県議団の藤山将材会長は採決の賛否を明かさなかったが、「議会としてIR誘致に向けた県予算も認めて3年間かけて進めてきたのに残念。自民党県議団が割れた一番の要因は資金調達の面。しかし、これで県内のIRがなくなったわけではない。次のチャンス(国の公募)を生かしたい」。反対票を投じた玄素彰人県議は「IR自体は賛成だが、資金計画が不透明。いい形でもう一度仕切り直せれば」などとした。

 傍聴に来ていた和歌山市の主婦山中美知子さん(72)は「カジノは絶対イヤですので、すごくうれしい。子どもや孫の世代にそんなものを残したくない。反対の署名活動をしていましたが、実を結びました」。御坊市の会社員(53)は「観光などの起爆剤として期待していただけに残念。カジノができれば県内の他のエリアにも大きな波及効果があったはず」と話した。

 IRについては政府が国内で最大3カ所に整備する方針。和歌山県の計画が白紙になったことで、現在誘致が進められているのは大阪府・大阪市の「夢洲」と長崎県佐世保市の「ハウステンボス」の2カ所となった。横浜市も誘致を計画していたが、昨年8月に反対派の市長が当選し、計画を撤回した。