授賞式会場で賞状を手に東さん㊧、宮所さん

 令和4年「東久邇宮(ひがしくにのみや)記念賞」の受賞者が決まり、日高地方から東山の森Ark代表理事の東睦子さん(65)=御坊市岩内=、パンとケーキの店ボナペティ・ヤナギヤを経営する宮所忠喜さん(65)=御坊市薗=が受賞。18日夜には和歌山市のダイワロイネットホテル和歌山で、県内受賞者への授賞式が行われ、2人は賞状を受け取り、「うれしく思います」と喜んでいた。

 天皇陛下の伯父(伯母の夫)に当たる故東久邇宮盛厚氏の「ノーベル賞を100とるより国民一人一人の小発明が大切」との理念に感銘を受けた豊澤豊雄氏が1963年に設立した非営利団体、東久邇宮記念会が主催する賞。「大衆への文化勲章」としての意義を持つ。

 東さんは、実家の所有地内にあった岩内1号墳を「有間皇子埋葬の古墳」と提唱した考古学の第一人者森浩一氏の言葉「考古学は地域に勇気を与える」に感銘を受け、「東山の森Ark」を立ち上げて古代学の検証活動に取り組んできた。毎年、イベント「有間皇子ことはじめ」を開催するなどして地域の人々に広く発信。古代学だけでなく、かわべ天文台復興、多種文化発信にも力を入れ、芸術品や書籍の保管再生活動「アートリボーン」「ブックリボーン」のプロジェクトも手がける。今回の受賞に「地域から全国発信している活動に気づいていただけたこと、とてもうれしく思います。背中を押していただいた思いです」と喜びを話している。

 宮所さんは高校卒業後、製菓専門学校から東京、神戸市、伊勢市の菓子店で勤務したあと渡仏。ニースとパリの菓子店で修行し、27歳で帰国して父の経営していた「ヤナギヤ洋菓子店」を受け継いだ。フランスでは見知らぬ人同士でも笑顔で「ボナペティ(召し上がれ)」と気軽に声を掛け合っていたことから、移転改装後「ボナペティ・ヤナギヤ」と改名。「パンとケーキで地域の人々を幸せにしたい」と、少しでも商品や店をよくするため研究しながら経営を続けてきた。隣接の「夢空間ふわり」を地元の人の活動の場として提供し、ちびっこパン教室」「大人のケーキ教室」を開くなど、食を通じた地域貢献に励んでいる。「この賞をいただけることにはとても驚きました。喜びと同時に、身の引き締まる思い。『食』によって人の温もりをもっともっと伝えていけるよう、今後も精進したいと思います」と話している。